リフロープロファイルと接合組織


はじめに

現在のSMT回路実装ではSn-3.0Ag-0.5Cu(SAC305)組成に代表されるSn-Ag-Cu系(SAC系)Pbフリーはんだが広く普及している。
SAC系Pbフリーはんだの組織はSn相とSn-Ag共晶相から成り、それぞれの相の粒内と粒界に金属間化合物(IMC) Cu6Sn5が分散している。 組成比率の影響は、低Ag組成でSn-Ag共晶相の割合が減少することを除いて組織の差は少なく、類似した組織が得られる。
 ただし、リフロープロセスでは基板・部品の比熱差によって接合部の溶融温度・時間および冷却レートが異なるため、基板・部品からの金属の拡散の影響を含めて接合組織の状態は一様でないと考えられる。
本稿では、3D・2.5D実装が普及し軽薄短小化が加速しているモバイル市場、 自動運転を始めとするセイフティパッケージで電装密度が高まっている車載市場の回路基板のリフロープロセスにおいて、 リフロー炉の均熱性向上によっても避けられないはんだ接合部の組織の変化について、SAC305組成で検証した内容を報告する。


1.試験基板の作成方法

試験基板の作成には車載専用SAC305組成ソルダペーストを、接合部品には3216サイズチップ抵抗、 接合基板には図1および表1に示す仕様のものを用いた。また、メタルマスク厚は120μm、リフローは山陽精工製 高温観察装置SK-5000を用い、 N2雰囲気で表2および図2に示す温度プロファイルを適用した。










2. 試験片の作成方法

1項で作成した試験基板の3216サイズチップ抵抗実装部の近傍を切断した後、熱硬化樹脂を用いて封止し、硬化後にチップ部品の中央まで研磨して観察用試験片とする。


3. 観察結果

表2.1に示す標準リフロープロファイルおよび表2.2に示す試験リフロープロファイルによって得られた接合組織(断面写真)は次のとおり。

<3.1 ピーク温度の影響>
図2.1のピーク温度を変更したリフロープロファイルによって得られた接合組織は、図3.1に示すとおり、 いずれの表面処理基板も標準条件の240℃以下ではSn相が粗大な傾向が認められる。 また、270℃でENIGを除くOSP・ImSn・HASLの表面処理基板では、 基板から拡散したCuの影響で晶出したと推定される粗大なCu6Sn5と思われるIMCが認められる。


<3.2 溶融時間の影響>
図2.2のピーク温度保持時間を変更したリフロープロファイルによって得られた接合組織は、 図3.2に示すとおり、いずれの表面処理基板も標準条件の45秒以上ではSn相の大きさに顕著な差はないもののSn-Ag共晶相が小さい傾向と、 Ag3Snと思われるIMCが晶出する傾向が認められる。

<3.3 冷却レートの影響>
図2.3の冷却レートを変更したリフロープロファイルによって得られた接合組織は、図3.3に示すとおり、 いずれの表面処理基板も-2.0℃/sec.以下の冷却レートでSn相が粗大化し、Sn-Ag共晶相が小さく、 Cu6Sn5と思われるIMCが粗大化する傾向が認められる。

4. まとめ

リフロープロファイルが及ぼす接合組織への影響について検証した結果以下が明らかとなった。

  1. リフローピーク温度は240℃以下のときにSn相が粗大になり、270℃でCuの拡散バリア層を持たない基板では粗大なCu6Sn5と思われるIMCが晶出する。
  2. リフローピーク温度が45秒以上のとき、Sn-Ag共晶相が小さくAg3Snと思われるIMCが晶出する。
  3. 冷却レートが-2.0℃/sec.以下のときにSn相の粗大化に伴ってSn-Ag共晶相が小さくなるとともに、Cu6Sn5と思われるIMCが晶出する。

5. 考察

過去にお客様からSAC305組成で接合した回路の冷熱サイクル試験で1,000サイクル以前の早期に破断した原因調査を依頼されたことがあり解析した結果、 破断箇所はシールドケース内のモジュール基板に実装されたBGA接合部であった。破断部の組織はSn相・IMCが粗大化しており、 冷熱サイクル数と組織の状態が相関しないため破断原因が特定できなかったが、今回の検証結果を参照すると、 比熱の大きいシールドケースの影響で接合部が序冷になったため低Agに類似した組織が形成されたことが原因と推定できる。 今後、接合組織の変化が及ぼす冷熱耐久性への影響について検証を行い、接合部の耐久性には、はんだ組成以外に接合温度条件が重要であることを明らかにしたい。

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